重症ウツの俺、覚書 その19
青春だったのか? 行く場所が見当たらないでもがいているだけの時間を過ごせた時期。
「本当に俺は生き方の下手な男だ!」
掛け間違えたシャツのボタンを気づきもしないで、貴方の答えばかりを気にしている。
「そんな事よくある話じゃないか」そう誰かが呟く。
「わかってる。わかってはいるんだ」
そう答えながら、俺は焦点の定まらない眼をブラブラさせている。
俺は焦ってる? 何に対してか解らないで、唯、焦っているんだ。
闇雲に手足をバタつかせて、息の尽きるまで同じことを繰り返すんだ。
きっと、こと切れた時には、「こんなもんさ」といってるんだろう。
でも確かに俺は間違っていた。
貴方がいつも空気みたいにそこにいて、くだらない話に笑い転げていれば良かった。
貴方を抱きしめた夜、白い冬がもうそこに来ていた。海から流れる風は冷たかった。うねりだけが遠くに聞こえていた。
言葉はすっかり失われていた。胸の高鳴りだけを感じながら、行き場のない両手が、冷えた空気を掴んでいた。
頭の中は空っぽで、明日はどうでもいい事実だった筈。瞬間だけを強く抱きしめていれば、時間はあるがままに流れていた。
「愛してる」その言葉は、どうにもならない所で、ウロウロしていた。
口笛を吹くみたいに喉元から抜け出せないで、ゴクリと低い音を鳴らして、自己嫌悪を重ねた。言葉が何かを変えてくれるなんで想えない。
退屈な日常を取り繕ろってみても、わけのわからない所で足りないものを抱いていた。
落ち着ける場所なんてどこにもないんじゃないか?俺はどこに行こうとしているんだろうか?どこにたどり着きたいんだろうか?現実を連れて行けるんだろうか?
貴方を抱きしめながら、これも夢のワンシーンなのかと想う。
貴方への問いかけが何だったのかさえ忘れてしまった。脱ぎ捨てた白いシャツがサヨナラをするように折れ曲がっている。
俺の髪に両手を入れて、貴方は俺の眼を覗き込み微笑んだ。
「嗚呼、夢のらこのまま醒めないでくれ!」
たどり着けないままの人生さえ夢なのかもしれない、、、